卒業論文の書き方と構成
(v20220119)
一般的には,次の項目により構成します.本研究室独自のローカルルールや分野による違いもありますので、外部の人にはあわないかもしれません。
1.背景と問題点(研究の必要性)
いきなり研究目的を挙げても分野外の人にはわかりません。そこで、この研究をする動機(社会的背景、ニーズ、研究領域の説明など) ・・・どういう分野で何を対象(課題)としているの か?を書いていきましょう。読者が研究対象(領域)をイメージできるように、下記の項目について大きな(一般的な)視点から徐々に絞り込んでいきます。
想定環境
どのような環境を想定しているのか?前提条件は何か?を明確にしましょう。ここが、非現実的であると意味が無いです。
ニーズ、課題
想定した環境において何が問題点であるのか?何か問題や必要性があるから研究をするわけで、ここはかならず論じなければいけません。
関連・先行研究とその位置づけ
【関連・先行研究】
ニーズがあるから作った(ニーズに対応するシステムを作った)というだけの内容は研究というより製品開発に近いと捉えられることがあります。ニーズは発明の母ですが、ニーズを解決するために、(技術的な)課題があることが明らかにし、その課題を解決するという内容であれば、それは研究らしくなります。
想定環境を対象とした同様の先行研究、あるいは問題点を解決する先行研究があるはずです。先行研究のない研究などありえません。研究を挙げるというのは、論文誌、学会発表論文集などをさします。それらを挙げていきます。卒論修論では、それをダラダラをあげるのではなく、アプローチ毎に分類していくのがベターです。
また、関連研究にも、大雑把に言って 国際学会論文>国内学会論文>国際会議論文>>国内発表論文というレベルがあります。研究らしく論じんるのであれば雑誌やウェブ(特に個人的なもの)は参考文献としては望ましくありません。
関連研究を見つける方法はCiNiiを利用すると良いでしょう。
【研究の位置づけ】
先行研究は挙げるだけではダメです。先行研究と自分の研究の関係性(位置づけ)を説明する必要があります。その関係性は
先行研究の成果(実装)を利用する(応用する)
先行研究の成果(実装)を改善する(または、それを上回る成果が期待できる異なる手法を提案する)
のいずれかです。前者については、「同じものを作りました」ということにならないようにプラスαの研究要素を取り入れられるようにしましょう。
2.目的
本研究で何を解決するのかを明らかにします。
問題点から問題を解決するための要求仕様を明確にする。(要求仕様を明確にする)
問題点についてすべて解決するように書く必要はありませんが、どのような位置づけになるのかは明確にしてください。
問題点を理解してゴール設定できることが卒業研究で最低限望まれるレベルです。
3.利用した技術(テクノロジー)
おちラボの独自記述ルール(記述項目)ですが、どのようなツールやライブラリを利用したのかて書いてください。
みなさんが卒研をしていて、わからなかった情報、探すのに苦労した情報、実装ノウハウ的なテクニックなど、第3者(後輩など)が参考になるように、いわゆるマニュアル的にコードを交えながら記述してください。
4. 手法
どのような方法で目的を達成するのかを書いてください。
実装の具体例 ではなく、抽象レベルで説明できれば研究としての格も上がります。(ここが一番難しいので、こだわる必要はないです)
研究でキーとなる手法(提案手法)を書いてください
5.実装
上記の手法利用したテクノロジーをもとに、どのように実装したのかを書く
ソースコードを載せることは必須ではないが、ポイントとなる部分だけを載せる。ソースコード全体は載せないこと。
実装 についてを参照
6.結果/評価/考察
原則として、研究目的を達成できたのかを判断するために行うのが評価です。
評価目的
なぜこの評価をするのか
この評価で明らかにしたいことは?
評価の範囲・・・
評価方法
評価のアプローチや全体像を述べる
-質的な評価 ・・・アンケート(人による主観的な評価)
-量的な評価 ・・・客観的なデータに基づく
できるだけ量的な評価を行うこと。質的な評価についても、それが妥当であることを客観的に示すこと
評価手順
具体的な手順を書く
評価結果ならびに考察
評価結果から言えることを書く。それ以上のことは述べない。
謝辞
謝辞は必ず書いてください。本当に謝辞の気持ちがあるなしに関わらずスタイルの問題です。世の中そういうもんです。書き方は過去の卒論を見てください。
よい文章を書くコツ
全体像は先に見せろ
たとえば、4つの機能を説明したいとき
4.1 ○○機能
4.2 ○○機能
4.3 ○○機能
4.4 ○○機能
と節で列挙していくと、読んでいきながら、「いったいこの機能説明はどこまでつづくんだろう?」「このシステムは何個の機能を持っているのだろう?」と不安になります。 特に卒論はページ数が多いので全体像を把握することは困難となります。
よって、「機能概要」の節を設けて事前に、システムぜ実装した機能を箇条書きで説明し、詳細を以下に述べる。。として、以降の節を説明するとわかりやすくなります。
難しいことは簡単に!簡単なことは難 しく!
これは一番大切なコツです。難しいことを難しいままに説明すると 「わけわからん」「説明下手」と評価されます。また、簡単なことを簡単にいうと、「なんだそれだけのことか。。」と評価されません。
抽象度を上げて考えてトップダウンに説明せよ
天才な人は、物事を抽象的に捉えてそれを 具体的な策に落としていく。。。いわゆるトップダウンな考え方に長けています。一方、我々のような凡人はいきなりそう考えることが難しいです。ですから、 具体的なことをやりながら、その抽象度を上げて考えていく。。ボトムアップ的な思考をせざるをえません。ただし、説明する時は天才のごとくトップダウンに 説明しましょう。それが「賢く」思われるコツであり、簡単なことを難しくいうことにつながります。
参考文献
参考文献で研究の格がわかります。参考文献により、どこに目線を向けているのかがわかるからです。ないよりはあっ たほうがいいです。大学院の進学する学生は必須です。
参考文献の書き方
著者名,著者名:論文題目、論文誌名、巻、号,ページ番号、年度、
例)越智洋司、論文の書き方、越智ラボ研究報告書、Vol.1,No,1,pp12-17,2010